西宮市・芦屋市の地勢と白蟻について

西宮市と芦屋市は、六甲山地とその麓でもある山間・丘陵地・山麓エリアと、
市街地のある瀬戸内海に面した平地エリアに分かれます。

（参照：西宮市の景観構造 -西宮小史-より）

前者の山間・丘陵地・山麓エリアは、
日本古来の在来種でもある「ヤマトシロアリ」の生息地でもあります。


逆に、後者の平地（平坦地）エリアは、
大阪湾に流れ込む暖流により冬でも比較的暖かく（瀬戸内海式気候）、
これに近年の温暖化の影響が加わり、
後述する「イエシロアリ」の被害までもが発生しているエリアとなっています。

今回は、阪急神戸線辺りを堺（下図の赤いライン）として
「北部」と「南部」に分け、それぞれの白蟻リスクをご説明していきたいと思います。

西宮市・芦屋市(北部)における白蟻リスク

本来、白蟻は「森の掃除屋」という異名を持つ通り、丘陵地や山地などの森だけでなく、
林のような木々の生えていた場所の土壌に多く生息しています。

自然界において、「白蟻がいない森は枯れる」と言われるほど重要な存在でもあり
古来から日本に生息するヤマトシロアリにとって、森林やその周辺は、
白蟻にとってのホームグラウンドとも言える場所なのです。

（参考記事：シロアリに「森を守る保険」の役割、実験で解明）

また、湿気を好む白蟻にとって、池や川、
また、水田の近くは生息がしやすい場所というのはご存じの通りです。

また、そういった場所を埋め立てた住宅地は、
土壌自体に湿気が多いこともあり、
加えて、盛り土として白蟻の生息しやすい土壌でもある「森の土」を使用していることが多いので、
白蟻に対する注意が必要です。

ヤマトシロアリに食べられた建物を支える床下の束

昭和の高度経済成長期以降には、
山間部や丘陵地・山麓や、水田・池などの埋め立てにより
団地（ニュータウン）が数多く作られました。

元棚田の形状を活かし開発された名塩エリア

（参照：【名塩】国鉄（JR）西宮名塩駅　開業 -西宮市-より）

宝塚市に近い名塩や高尾台周辺、
神戸市（北区）に近い北六甲台やすみれ台周辺だけでなく、
芦屋市・西宮市共に、
阪急神戸線より北側に位置する丘陵地・山麓・山間エリアに建てられている住宅は、
白蟻に対する注意が必要です。


こういったエリアは、
白蟻の生息地でもある土壌の上に、餌である木材を利用して建てられているわけですから
何もしていなければ、被害が出る可能性があるというのは言うまでもありません。

西宮市・芦屋市(南部)における白蟻リスク

それでは、
阪急神戸線より南側に位置する、平地エリアは、大丈夫なのかと言うと、そうではなく、
むしろ、北部エリアよりも注意が必要です。


もちろん、このエリアにおいても、ヤマトシロアリは生息しています。
餌である木と水があるのであれば、活動範囲は山である必要はありません。

しかし、「南側において、特に白蟻に注意が必要」という理由は、これではありません。

注意が必要な理由は、イエシロアリという種までもが、このエリアでは発生しているからです。

イエシロアリの脅威

イエシロアリは、
国際自然保護連合による「世界の侵略的外来種ワースト100」にも入っており、
世界的に恐れられている危険な生物でもあります。

日本の在来種でもあるヤマトシロアリが、
1つの巣（コロニー）に、数千から数万匹なのに対し、
イエシロアリは、大きい場合には1つの巣に百万匹にもおよぶ個体が存在します。


そのため、一度侵入されてしまうと被害速度は極めて速く、
被害規模もヤマトシロアリの比ではないほど甚大となるため、
白蟻の種の中では、世界的にも各段に危険性の高い白蟻なのです。

このような背景もあり、
業者によっては、イエシロアリの駆除には通常のしろあり保証を出せなかったり、
イエシロアリを対象とした工事には別料金（ヤマトシロアリよりも高額）となることもあるほど、
白蟻業者の間でも恐れられている白蟻でもあります。

壁内の木材を天井まで食べられていた被害

もともとは、日本にも外来種と南（台湾や中国）からやってきたのですが、
昔は、国内においても沖縄や九州などの暖かい地域にしか生息していませんでした。

その理由は、1月の平均気温が4度を下回る場所では、
冬を越すことが出来ず、定着することが困難となるためです。

（参照：移りゆくシロアリ生息分布より）

しかし、平成に入り、
兵庫県でもイエシロアリ被害が度々確認され始めました。

これは、近年の急激な温暖化の影響が要因として挙げられます。

実際に、気象庁の昭和から2024年まで1月の平均気温を見ると
1986年（昭和61年）以降、兵庫県の港側（芦屋市・西宮市に隣接する神戸市）では
4度を下回ることがなくなったことがわかります。

（参照：神戸（兵庫県)　の月平均値（℃） 気象庁｜過去の気象データ検索より）

もともと、冬でも比較的暖かい瀬戸内気候区であった南部の海側エリアが
温暖化により、イエシロアリが定着できる環境（温度）となってしまったのです。

（参照：兵庫県の年平均気温（統計期間：1981～2010）　神戸地方気象台より）

加えて、土の中だけでなく、
家の壁の中に巣を作ることもあるイエシロアリにとっては
住宅の高断熱化も、冬を乗り越えることが出来る一因になっているかもしれません。

今後、温暖化が進めば、
南から北へと生息エリアは徐々に広がっていきます。

今から5年後、10年後には、
現在発生していないエリアにおいても、イエシロアリが出る可能性がある
と言うことを念頭に置いた上で、
ご対応していただく必要があるかと思います。

阪神淡路大震災によるの白蟻リスクの顕在化

「白蟻予防の概念がない時代」に建てられた住宅の多くが、
1995年（平成7年）に発生した阪神淡路大震災にて大きな被害を受けました。

また、震度7を記録した淡路島北淡町と神戸市東灘区では
腐朽・シロアリ被害があった家の95%以上が全壊・半壊したと話題にもなったことを
覚えている方もおられるのではないでしょうか？

（参照：阪神大震災にみる住宅の腐朽およびシロアリ被害より）

そして、この大地震の後、
建築基準法においても防蟻処理（予防）の必要性が明記されるほど、
「白蟻予防」という概念が、広く認知されるようになったのです。

新築時の防蟻処理の必要性

前述のように、現在、多くの戸建て住宅が、白蟻の生息地の上に建っています。

だからこそ、
西宮市および芦屋市においては、震災後に建築された戸建ての多くが、
新築時の「防蟻処理」が行われているのです。

「建築時に処理しているのは、法律で定められているからでしょ？」
と、考えている方も多いかもしれません。

しかし、実は建築基準法では、
「必要に応じて防蟻措置を講じなければならない」とあり、必須ではないため、
建築会社が「白蟻は出ない」と考えるのであれば、
わざわざ防蟻処理をしなくても良いのです。

プロである建築会社が「このエリアは白蟻が出る可能性がある」と考えているからこそ、
白蟻予防を新築時に実施しているのです。

きっと、住宅購入時に渡される「建築書類一式」に、
下図のような「しろあり防除保証書」が入っているかと思いますので、
下図のような一度確認してみてください。

家族を守るために出来ること

一般的な新築時の防蟻処理では、5年の薬効が切れてしまい、
その後は、白蟻の侵入に対しては「無防備」となってしまいます。
よって、知らぬ間に白蟻は進入し、
知らぬ間に被害が拡大していきます。

地震大国でもあるこの日本では、
「耐震性」が家と家族を守るためにも重要視されています。

しかし
もし、家を支える木材が白蟻に食べられてしまえば
「耐震等級」など全く無意味です。
だからこそ、私たちテコラでは
新築時の防蟻処理の薬剤効果が切れてしまった戸建住宅にお住いの方々には、
大切な家族を守るためにも、白蟻予防（家を守る対策）を強くお勧めしております。